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宮崎地方裁判所 昭和46年(ワ)431号 判決

原告

垣田憲子

原告

伊地知真知子

右両名訴訟代理人弁護士

鍬田萬喜雄

成見正毅

成見幸子

被告

株式会社

宮崎放送

右代表者代表取締役

加藤韓三

右訴訟代理人弁護士

竹内桃太郎

渡辺修

山西克彦

外三名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1  被告が昭和四六年八月一六日になした、原告垣田憲子に対する編成部素材課への、及び原告伊地知真知子に対するラジオ局運行課への、各配置換え命令は、いずれも無効であることを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二、当事者の主張

一、請求原因

1(一)  被告はラジオ、テレビの放送を業とする会社である。

(二)  原告垣田は、昭和三五年九月一日被告会社に入社し、同四六年八月一五日までアナウンサーとして被告会社のアナウンス部アナウンス課に勤務していた。

(三)  原告伊地知は、昭和四五年四月一日被告会社に入社し、同四六年八月一五日まで一般事務職員として総務部経理課に勤務していた。

2  ところが、被告は、昭和四六年八月一六日付で、原告垣田に対してはテレビ局編成部素材課へ、原告伊地知に対してはラジオ局運行部運行課へ、それぞれ配置換えする旨命令(以下本件配転命令という。)した。

3  本件各配転命令は、次の理由により無効である。

(一) (労働契約違反)

(1) 原告垣田は、アナウンサーとして採用されたもので、したがつて、被告会社との間ではアナウンサーを職種とする労働契約が結ばれていたものである。

また、原告伊地知は、一般事務職員として採用されたもので、したがつて、被告会社との間では一般事務職(以下単に一般職という。)を職種とする労働契約が結ばれていたものである。

(2) しかるに、原告垣田が配転された素材課は、テレビ番組の運行に関する事項、さん孔テープの作成に関する事項等を所掌事務とし、一般職員の勤務する部課である。

また、原告伊地知が配転された運行課は、ラジオ番組の運行に関する事項、ラジオ放送設備の運用・保全に関する事項、ラジオ送信設備の監視・遠隔操作に関する事項等を所掌事務とし、技術職員の勤務する部課である。

(3) よつて、本件各配転命令は、いずれも職種の変更を伴つており、したがつて原告らとの労働契約に違反し、無効である。

(二) 仮に右主張が理由がないとしても、本件各配転命令は、業務上の必要性もなく、また労使関係における信義則に反するもので、人事権の濫用として無効である。

4  よつて、原告らは、被告に対し、本件各配転命令の無効を訴えたが、被告はこれを争うので、請求の趣旨のとおりの判決を求める。

二、請求原因に対する認否〈略〉

三、被告の主張

1  原告らと被告会社間の労働契約は、原告ら主張のようにその職種が固定されているものではない。被告会社では、社員の採用に当り、契約上職務内容を特定したことはなく、原告らについてももちろんその例外ではない。(もつとも、被告会社において、社員を担当職務によつて区分する考え方として、一般職とか技術職とかいう一応の概念が存在することは事実であるが、これは労働契約上一般職員とか技術職員とかいう区分が存在するということではなく、技術的な素養を持つて入社した者とそうでない者が現実にいることから俗に言われているに過ぎず、格別の根拠を有するものではない。)社員との間で取り交わす文書、或いは社員から提出される文書で担当職務を特定したものはなく、したがつて、被告会社と原告ら社員との労働契約の内容は就業規則の定めによることになるが、就業規則には特定すべき規定は一切なくかえつて、第九条には「会社は社員に対し、業務の都合により転勤または職場の変更および職務の変更を命ずることがある。」旨規定されている。

したがつて、原告垣田のようなアナウンサーについていえば、アナウンサーとして年令的、音声的に適さなくなつたり、人員に余剰が出る事情が生じた場合には、他の職種に配置換えされることがあることは、労働契約上当然その内容となつているものである。また、現実問題としても、アナウンサーは年令的、内容的な条件によつて制約を受け易く、定年までアナウンサーである例は稀有の事例に属し、アナウンサーとして採用された者であつても、一定の年令に達すると他の職務に移るのが通常であつて、それが社員一般の認識でもある。現に、被告会社において、アナウンサーから他の職場へ配転になつた例は、本件配転前だけみても七件ある。

しかして、被告は、原告垣田については、次に述べるような正当な業務上の事由に基づいて本件配転を行なつたものであるから、それが職種の変更を伴うものであつても、何ら違法とされるいわれはない。

また、原告伊地知に対する配転命令は、職種の変更を伴わないのみならず、後記のような業務上の必要性に基づいてなしたものであるから、何ら違法、不当なものではない。

2  原告らの配転の経緯

(一) 被告会社の機構改革

被告会社は、昭和二九年設立後、その放送エリアとする宮崎県一帯において競合する民間放送局が他になく、またスポンサーたる各種業界の好況もあつて順調な業績の伸長をみた。ところが、昭和四五年四月、被告会社と放送エリアを同じくする株式会社テレビ宮崎が発足した。同社は、営業面においては低料金とこまめな営業活動によつて被告会社の市場にくい込んでくる一方、県内一帯に通信網を持つ宮崎日日新聞と緊密な関係を保つて地域社会に密着した情報を提供し得る態勢を作る等、被告会社にとつては強力な競争相手としての力を備えてくるに至り、被告会社の独占的な地位が失われた、加えて、昭和四五年、四六年は経済界一般、ひいては広告業界全般が不振で、特に大口スポンサーであつた家電業界、医薬品業界からの広告依頼が減少し、そのために、被告会社売上げの伸びが昭和四四年度においては前年比23.5パーセントであつたものが、翌四五年度には6.9パーセントに激減した。そこで、被告会社としては、業績の維持向上のために、営業活動の強化、地域に密着した番組や視聴者に魅力ある番組の強化を図り、一方業務の改善、効率化と経費の節減を図る必要に迫られていた。

しかして、被告会社は、原告らの所属する民放労連宮崎放送労働組合のなした争議行為に対抗して、昭和四五年一二月一日ロツクアウトを実施し、翌四六年六月三〇日にこれを解除したが、ロツクアウト解除、社員の全面就労に伴い、企業の再起を期して、営業部門及び報道部門の強化を柱とする機構改革を実施し、それに伴つて、同年八月一六日、全社的規模(異動対象者は全社員数約二〇〇名のうち八四名)で社員の配置転換を行なつた。原告らに対する本件配転もその一環としてなされたものである。

なお、右機構改革を実施するについては、昭和四六年三月一日業務推進委員会を発足させ、検討に着手し、同委員会の答申を基礎にして同年五月中旬役員会で決定した。右の検討の過程で、営業と報道の強化につき両部門の人員増を伴うことは避けられないが、新規採用はしないことを基本方針としたこともあつて、従来の各部課における人員配置、作業手順を洗い直した。その結果、作業手順の変更、それによつて生じる各部課における人員の増減をみることになつた。人員の増減については、特に、営業部門では販売促進部の新設等により実質九名増となり、報道部門では、人員は一名増に留まつたが、テレビ局とラジオ局にまたがる報道本部を新設し、機能的に大幅な強化をみた。

(二) 原告垣田の配転の事情

(1) 機構改革前、アナウンス課には原告垣田を含め八名の女子アナウンサーが在籍していた。このうち定員は七名で、残り一名は、女性の場合結婚退職者が毎年のように出るので、補充のための余剰人員として新人を置いていたのである。定員七名の内訳は、テレビ二名(九時―一七時が一名、一一時―一九時が一名)、ラジオに二名(九時―一七時)、休日・生理休暇・年休要員二名、録音業務一名であつた。このような勤務形態をとつていた理由は、主として、生のアナウンスが多かつたためで、各番組の前後に入る枠アナウンス(「この番組は××の提供でお送りします。」「この番組は××の提供でお送りしました。」等)や、番組の中に挿入される広告放送(CM)が、従来は生アナであつたため、アナウンサーも一日中拘束されるし、疲労度の関係或いは連続して同一人の声が出ることを避ける意味もあつて、テレビについては時間帯をずらせて二名配置し、またラジオ・テレビの各担当のほかに録音のため一名配置しなければならなかつた。

(2) ところが、機構改革後は、ラジオ運行に従来未使用であつた多装テープ再生機を使用し、またラジオ・テレビ共に、枠アナ、CM、スポツト等を、一本化されたテープにあらかじめ録音しておいて、APO(番組自動制御装置)により自動的に放送することにより、生アナでなければならない部分が大幅に減少した。そのため、アナウンサーがスタジオに待機する時間が減少し、一本化テープへの録音作業はその空き時間に処理が可能となつたので、テレビ関係は一名(一一時―一九時)配置すれば充分となり、更に、日勤に余裕ができた関係上急な退職者がでても何とか処理できるようになつたので、余剰人員一名も不要となつた。かくして、テレビ一名、ラジオ二名、休日休暇要員二名、録音業務一名、合計六名で充分となり、二名が不要として他へ配転されることになつたのである。

(3) 女子アナウンサー八名のうち二名を他に転出させるにつき、被告会社が人選の基準としたのは、声の質、声量等を含めた一般的なアナウンサー技術(話し方、なめらかさ、アクセント・イントネーシヨン等の正確さ)及び近時アナウンサーに要求される即興性、個性、タレント性の有無、並びに将来の可能性である。

(4) 原告垣田は、右の基準に照らして明らかに他の同僚アナウンサーに劣ると判断されたので、他の一名と共に配転の対象としたのである。

すなわち、原告垣田には発声上の欠陥があつて、アナウンスになめらかさがなく、スピーデイなアナウンスが要請される場合に充分こなし切れず、またアクセント・イントネーシヨンに狂いがあり、加えて、近時アナウンサーに強く要求されている即興性個性に欠けているため担当番組も少なく、公開・中継番組にあつては回数が極端に少ないばかりか、そのいずれについても問題が起きているという状況であつた。したがつて、原告垣田は、他のアナウンサーに比し、アナウンサーとしての適性に欠けていたのである。

(5) しかして、前記機構改革に伴い、編成部素材課に欠員を生じることになつたが、同課の職員の作業内容は、例えばフイルムやVTRのプレビユー、検尺、フイルムつなぎ、キユーシート(番組進行表)の作成、パンチ業務等で、大半が女性の職場であり、原告垣田にも充分勤まると判断されたので、被告会社は同原告を右素材課へ配転したのである。

(三) 原告伊地知の配転の事情〈以下事実略〉

第三、証拠〈略〉

理由

一請求原因第1、2項の事実及び原告垣田に対する本件配転命令が職種の変更を伴うものであることは当事者間に争いがない。

二原告らは、本件各配転命令が原告らと被告間の労働契約に違反する旨主張するので以下検討する。

1  原告らと被告会社との間の労働契約の内容について

(一)  〈証拠〉を総合すると、「被告会社の社員の職務には、専門的知識経験を要しない職務(一般職)のほか、その事業の性質上、電気ないし放送設備についての専門的知識、経験を必要とする職務(技術職)及びアナウンサー等の職務があるが、従来、被告会社が社員を採用するにあたつては、採用後に担当させるべきこれらの職務に応じて採用人員を定め、募集広告にも右職務ごと採用人員を明示し、採用試験についても、技術職志望者には電気関係等の専門的知識の試験を課し、アナウンサー志望者には一般の学科試験(一般職志望者と共通)のほかに、アナウンサーとしての適性の有無をみるための音声テストを行なつており、社員として採用後は、それぞれの応募の際の志望の職務に就かせていること、このことは、原告らについても同様で、原告垣田は、昭和三五年に、被告会社のアナウンサー一名の臨時募集に応じ、音声テストを受けて採用され、以来アナウンサーとして勤務してきたもので、また原告伊地知は、昭和四五年度の被告会社の定期社員募集に、一般職志望者として応募し、採用後は三ケ月の試用期間を経た後、昭和四五年七月から総務部経理課に配属され、一般経理事務を担当していたこと」が認められ、これに反する証拠はない。

右事実によつて考えると、原告垣田についてはアナウンサーとして勤務することが、また原告伊地知については一般職(特殊の専門的知識、経験を要しない職務という意味での)の職員として勤務することが一応被告との労働契約の内容をなしていたものといわざるを得ない。

(二) しかしながら、〈証拠〉によると、被告会社の就業規則には、その第九条に、「会社は社員に対し、業務の都合により転勤又は職場の変更及び職務の変更を命ずることがある。」旨規定されていること、原告らは、いずれも、その入社の際、右就業規則の内容について説明を受けたうえ、これを遵守する旨の誓約書を被告会社に差し入れていること、他に、職務の内容に関し原告らと被告間に何らの特約もないこと(なお、辞令面ではアナウンサーも、一般職員も、技術担当の職員も、身分は一律に「社員」であつて、職種による区別はされていない。)が認められるが、右事実によれば、右就業規則第九条の規定も原告らと被告間の労働契約の内容をなしているもの、すなわち、原告らは、被告会社に業務上の必要のあるときは、被告会社が原告らに対し職務内容等の変更を命じ得ることを承認したものというべきである。(ちなみに、〈証拠〉並びに弁論の全趣旨によると、一般に、アナウンサーはその職務の性質上年令的身体的な条件による制約を受け易いにもかかわらずいわゆる若年定年制はとられておらず、したがつて、アナウンサーとして入社した者でも或る時期に他の職務に変わつて引き続き会社の職員として勤務するのが通常であり((任意退職する者は別として))、そのことは、被告会社に勤務するアナウンサーらの間にも当然のこととして認識されていることが認められる。)

そうすると、被告会社は、業務上の必要がある場合には、原告ら社員に対し、その職務内容の変更(職種の変更)を伴う配転命令をもなし得るものといわなければならない。

2  原告らの配転経緯並びに配転の内容

(一)  被告会社の機構改革

〈証拠〉並びに弁論の全趣旨を総合すると、被告は、被告の主張2、(一)のとおりの事情、経緯で機構改革を計画、実施するに至つたこと、本件原告らへの各配転命令もその一環としてなされたことが認められ、これに反する証拠はない。

(二)  原告垣田の配転の事情

〈証拠〉によると被告の主張2、(二)の(1)及び(2)のとおりの事情で、従来アナウンス課に必要とされていた女子アナウンサー八名が、機構改革後には六名で足りることになり、二名が余剰となつたこと、一方、他の部門において増員を要するため、被告会社は、女子アナウンサー八名のうち二名を他の職務に配置換えをすることにしたこと(なお、男子アナウンサーについても、同様に一名を他の職務に配転することにした。)が認められる。

しかして、〈証拠〉並びに弁論の全趣旨を総合すると、被告会社は、他の職務へ配転すべき女子アナウンサー二名の人選の基準としては、アナウンサーが一定の素質と訓練を要する勤務であつて、他の職務に比し補充が簡単にできない性質のものであるところから、アナウンサーとしての適性、将来性に優れている者をそのまま残し、アナウンサーとしての能力ないし将来性が総合的に劣る者を配転の対象者として選ぶことにしたこと、そして、具体的な人選につき、アナウンス課長ら上司の意見を求めて検討した結果、原告垣田については、同原告が女子アナウンサーの中で最年長であつて若さに欠けていること(なお、被告会社では、女子アナウンサーは結婚と同時に退職する例が殆どであつた。)、アクセント、イントネーシヨンにやや狂いがみられ、またスピードを要求されるアナウンスが苦手で、そのための放送の失敗も一度ならずあつたこと、更に、近時特にアナウンサーに必要とされるようになつた即興性、個性の面で物足りないため、テレビの公開、中継等の番組の担当が少なかつたこと、等を総合的に考慮して、他の者に比し、アナウンサーとしての適性、将来性の点で劣るものと判断し、他の一名(同人もアナウンサーとしての能力が劣るものと判断された。)と共に配転の対象としたこと、そして、一般事務に経験の乏しい原告垣田にも充分勤まると判断された編成部素材課(同課の職員の作業内容はフイルムつなぎ、番組進行表の作成、パンチ業務、フイルムのプレビユー、検尺等で大半が女性である。)へ配転したものであること、以上の事実が認められ、これに反するか、もしくは反するかのような〈証拠〉はにわかに採用できず、〈証拠〉も未だ右認定を左右するには足りない。

(三)  原地伊地知の配転の事情及び配転後の職務の内容

〈証拠〉を総合すると、被告会社は、被告の主張2、(三)の(1)、(2)及び(3)のとおりの事情、経緯で原告伊地知を総務部経理課からラジオ局運行部運行課へ配転したものであること、運行課において同原告が担当すべきものとされた職務の内容は、録音業務を含むラジオ放送運行業務、具体的には運行表にしたがつて放送機器を操作する業務であるが、右業務は、電気、機械に関する専門的な知識、経験がなくても、短期間の訓練を受けることによつて、充分従事できるものであること、現に、原告伊地知も、何らこれらの専門的知識、経験は有しないにも拘らず、三ケ月間の訓練によつて機器の操作方法を習得して業務に就き、以来格別の支障もなく右業務を遂行してきていること、このように、専門的知識、経験のない職員に放送機器の操作を担当させている事例は他の民間放送会社にもみられること、以上の事実が認められ、これを左右するに足りる証拠はない。

3  以上右2、に認定の事情によつて考えるに、まず原告垣田については、本件配転命令は職種の変更を伴うものであるけれども、被告会社の業務上の必要に基づくものと認められ、かつ原告垣田を配転の対象として選定したのも、被告会社の恣意によるのではなく、一応合理的な根拠によるものと認められるので、前示の同原告と被告間の労働契約の内容に照らし、本件配転命令は右契約に違反するものではないと解するのが相当である。

また、原告伊地知については、本件配転命令は、原告主張のように一般職から技術職への職務内容の変更(職種の変更)を伴うものとは認めがたいのみならず、仮に職種の変更に当たるとしても、本件配転は被告会社の業務上の必要に基づくもので、その内容も不当、不合理なものとは認められないので、前示同原告と被告間の労働契約に違反するとはいいがたい。

よつて、本件各配転命令が労働契約に違反し無効である旨の原告らの主張は採用できない。

三次に、原告らは、本件各配転命令は労使関係における信義則に反し、人事権の濫用として無効である旨主張する。

しかし、右二、2に認定の諸事情、並びに、原告垣田に関しては、アナウンサーが一般職と異なる職務であるとはいうものの、原告垣田を含め被告会社のアナウンサーに関する限り、あらかじめ何らかの特殊の専門教育を受けているのではなく、入社後の一定期間の社内訓練を経たのみでアナウンサーとしての実務に就いているに過ぎず、給与その他の待遇面でも他の職員と全く差異はないこと、したがつて本件配転命令の結果給与面その他で不利益を受けることはないこと(この点は証人弓削幸正の証言及び原告垣田本人尋問の結果により認め得る。)に鑑みると、本件各配転命令が信義則に反し、人事権の濫用に当たるとはにわかに認めがたく、他に原告らの右主張を裏付ける事実を認めるに足りる証拠はない。

四よつて、原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(柴田和夫 笹本忠男 同渡辺安一)

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